10月からの
居宅介護支援について
10月から居宅介護支援について、区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ、訪問介護が利用サービスの大部分を占めるケアプランを作成する居宅介護支援事業所を事業所単位で抽出し、点検・検証する仕組みが導入された。区分支給限度基準額の7割以上を使い、かつ、サービス全体に占める訪問介護の割合が6割を超えた場合、そのケアプランを役所に提出することを義務づけて、地域ケア会議などで検証する。これは、ケアプランの一つでも該当したら対象になるわけでは無い。ひとつの居宅介護支援事業所が契約している利用者全員の区分支給限度基準額を合計し、合計額の7割以上の給付単位のケアプランを組み、かつその6割以上が訪問介護の場合、地域ケア会議などでの「ケアプラン点検」(介護給付等費用適正化事業)の対象として抽出されるということで、平均が7割を超えた場合である。要件に合致した場合、令和3年10月1日以降に作成又は変更したケアプランのうち、市町村から指定されたものを市町村に届け出る必要がある。市町村は、最も訪問介護サービスの利用割合が高いものなどを、介護度別に1件ずつ以上を指定し、ケアプランの第1表、第2表及び第3表の提出を求める。必要であれば2件以上の提出が依頼される。必要に応じてアセスメントシートの提出の依頼がなされる。市町村からの届出の依頼を受けた場合、訪問介護が必要な理由等を記載したケアプランを市町村に届け出る。地域ケア会議等で、多職種の視点から、届出のあったケアプランについて議論される。結果、見直しが必要とされた場合は、検証対象のケアプランの再検討を行い、事業所内において同様・類似の内容で作成しているケアプランの内容についても再検討を行う。なお、再検討とそれに基づく見直しが行われない場合は、それらのケアプランは、引き続き、地域ケア会議等での検証の対象となり続ける。
日本初、福祉事業
再建支援専門家チーム
創設の意味
介護・福祉事業では、経営環境の悪化傾向が続いている事は周知の通り。様々な要因が重なっているが、その専門的分析は進んでいない。またその対策も、体系的な手法は示されていないのが現状だ。
いま私が中心となり、法務、財務、事業実務など様々な専門家でチームを作り、福祉分野に特化した再建支援チームを組成する準備を進めている。その一部をご紹介し、今後の福祉業界がより良く健全な経営環境になる道筋を見通したい。
介護福祉業界の経営実態は?
誰もが感じている通り、経営環境は年々厳しさを増している。外形的な数値結果で見ると、全国の社会福祉法人のうち赤字決算は約28%。介護事業中心の法人では約33%。赤字法人の割合は、直近5年間で7%以上増加した。
倒産件数も年々増加し、昨年は過去最高120件を超えた。ただしそれは氷山の一角で、休止・廃業の件数は500件を超えている。
さらに、この業界の資金借入残高全体に占めるリスク管理債権の比率は、H30年3.2%、R1年3.7%、R2年5.5%と急増中だ。国内全産業平均は1.1%、リーマンショック直後でも2.4%だったことを考えると、いかに高い割合であるかがわかる。もはや金融機関から見ると、非常に貸出リスクの高い業界になってしまっているのだ。
この原因は、下記に挙げる経営環境の悪化だけではない。福祉業界が法人経営・組織運営・人材育成の知見をさらに深め、経営品質を高める努力を続けていかなければならないと感じる。
事務長・本部機能強化・
経営企画室
代表取締役社長 本間 秀司
私は今、これほど事務長・本部機能の重要性が注目されている時期はないと考えています。私は様々な地域・法人様をコンサルティングでご支援しておりますが、優秀な経営を実践している法人は、医療法人であれ社会福祉法人であれ株式会社であれ、優秀な事務長が存在していることを知っています。なぜ、「今」優秀な事務長及び本部機能が必要なのか? それは、今、「強い経営」が求められていること。そして、今、「変化」が求められている時だからです。もし、今から20年前の経営環境であったなら、強い経営も変化も必要としなかったことでしょう。しかし、今は2021年です。ゴールの2040年から逆算すれば、「あと20年」と残りわずかです。この期間で、地域によっては2060年までが決まってしまうと考えれば、その重要性が理解できるはずです。
人間は変化を怖がります。コンサルティング会社であるWJUのスタッフでさえ、「今、上手くいっているのだから、何もリスクを負って新しいことをしなくても。」と言います。人間とはそうしたものです。
しかし、今の経営環境が、下りのエスカレーターを早歩きで昇っていかなければ、下へ下へと下がってしまう厳しい環境だということは、施設という「箱」の中にいるだけでは分からないものです。
では、事務長がいかに重要なポストであるか確認しましょう。WJUは、事務長を次のように定義しています。
• 法人事務長とは、事務責任者。
• 事務責任者とは、ケアとキュア以外の全てに責任を持つ者。
• ケアとキュア以外の全てに責任を持つ者とは、経営と運営を司る者。
• 経営と運営を司る者の力量で法人の業績が決まる。
事務責任者の最も重要な仕事は、サステナビリティの本質を理解して、法人の風土(カルチャー)を経営者とともに創造していくことだと考えます。〈風土(カルチャー)とは:職員の活動や思考に働きかけるものとしての環境。〉
もし、理事長が事務責任者を事務屋として雇用しているのであれば、もし、事務責任者が自分を事務屋として指示待ちでいるとすれば、法人の将来は厳しいものになります。そして、今、事務長が果たすべき使命を次のように考えます。
法人の未来を創る第二創業への挑戦
社会福祉法人 白熊会
法人本部 経営企画室 室長
山下 兼一朗
■法人概要
社会福祉法人白熊会は、福岡県福岡市の城南区にあり、特別養護老人ホームを中心に事業を経営しています。福岡市の中心部天神からも地下鉄で12分と利便性の高い閑静な住宅街に建っています。令和4年には博多駅までの地下鉄延線工事が完成し、よりアクセスの良い環境となるエリアです。白熊会は、平成16年に創設理事長の想いによって設立され、平成17年10月に特別養護老人ホーム白熊園が開園されました。白熊の由来は、強さと愛情を持った存在であることを目指して名付けられたと聞いています。地域に対しては、初任者研修事業、コグニサイズによる認知症予防教室、ホール貸出やプロの音楽家による定期コンサートの開催などを行っています。コンサートは好評で、多い時には100名ほどの地域の方々に楽しんでいただいています。
■法人における役割
私は平成18年5月に経理職として入社し、現在、勤続16年目を迎えています。仕事内容は、経理業務を中心にしていましたが、令和2年度から経営企画室としての仕事を兼務することになりました。幅広い内容を勉強しなければなりませんし、法人内で一番勉強する存在でいなければならないと考えています。また、上司の「若い世代の考えを経営に取り入れなければならない」という強い思いから推薦していただき、理事職も拝命しました。法人の将来がこのままでは不安であるという危機感と、なんとかしたいという思いを受け取っていただいてのことだと理解しています。また、一番の役割は、理事長の決断のサポートです。そのためには、情報、数字データ等の根拠はもちろんのこと、人としても信頼されなければなりません。まだまだ未熟な部分が多いので、そういった存在に近づけるように日々、努力していきたいと思います。
モチベーションの維持と
組織内への伝播
リーダーにとっての
モチベーション
今回は筆者が考えるモチベーションについてお伝えします。組織においてリーダーのモチベーションに大きな波があると、組織が振り回されてしまいます。落ち込んでいたら活気がなくなるでしょうし、逆にハイになり過ぎてもついていけなくなります。短期間の経営者でなければ、経営は短距離走ではなく長距離走となります。そのため、モチベーションはあまり波打たず、ある程度高いところで安定して仕事をすることを心がけています。辛いことはたくさん起こりますが、できるだけストレートに感情を出さず、組織に対しては心理的安心感を与えられることが重要だと思っています。
評価の見える化
〜ナースキャップは「見える化」の先駆け?〜
改めて。筆者は今年4月より本連載を担当させて頂いているが、できれば斬新な切り口で色々とご紹介したいと、これまで寄稿してきた。本稿も賛否両論あることは重々承知の上、拙い文面をご参考に頂けたらと思う。
自衛隊から参考を探る
筆者は右記肩書きに記載のある通り、医療界で働く以前は陸上自衛隊という組織にて勤務していた。自衛隊の一般隊員出身者でPTや看護師になるケースは珍しくなく、ご存知の通り自衛隊の中でも看護師や医師になるコースもある。看護師や医師で自衛隊を退職して民間病院で働いている人たちは意外と多いが、筆者のように一般部隊で幹部自衛官として10年ほど勤務し、それからSTになったケースはこれまで聞いたことはない。自衛官時代は毎日100名ほどの部下の教育訓練、マネジメントとリーダーシップを生業としてきたため、医療界に転身後にも人材育成や組織運営のヒントとなったことがとても多い。
一般的な見方では、自衛隊と医療界とは言わば「正反対」の業種かもしれない。自衛隊は人の生命や財産を守るために敵を殺すことも含むあらゆる手段を講じる業種。かたや医療界は、人を死なせないためにあらゆる手段を用いる業種。「人を守る」という点では同じだが、見方によってはある意味相反する2つの業種を10年ずつ経験してきた珍しい経歴であり、本稿は医療界に転身して感じた組織運営や人材育成上の違いと、それらを踏まえた際の医療界の今後発展の可能性のあるテーマについて自論を紹介したい。
何故、
LIFEを早期に手掛けて
フィードバック活用するのか
4月から運用が開始された科学的介護情報システム(LIFE)は、初日からシステム障害で運用がストップした。その原因は、想定以上のアクセスが集中したためとされている。システムがパンクするほど、多くの介護施設、事業所がLIFEに取り組んでいることを意味する。やはり今もトラブルが多く、LIFE鬱という言葉も聞こえている。しかし、LIFEには将来性を大きく感じることも事実だ。LIFEのデータ提出は、トラブル多発の影響で、特例措置として4月から6月分については8月10日までの提出を認めていた。そのため、7月後半よりデータ入力に掛かり、何とか10日の提出に間に合わせた施設、事業所も多い。今後の焦点は、7月提出月分までのデータを分析したフィードバックが、いつ提供されるかである。通常であれば、10日までに提出されたフィードバックは月末までに提供される。そのデータは完全な形では無く、経時的なデータを含むフィードバックについては、令和3年8月以降の実施を予定しており、今後、フィードバック内容を順次拡充していく予定とアナウンスされている。提供されるデータは、当初はPDF形式のみと言われていたが、Excel形式のデータも選択できるという。それであれば、自分たちでデータ加工できるので活用の幅が拡がる。
コロナ禍にこそチャンスあり!
飛躍への転換点
新型コロナウイルスの猛威が訪れてから間もなく2年。たった1つ、目にも見えないウイルスによって、私たちの社会秩序のあり方は根底から覆された。
200年に1度訪れると言われるこの大転換点を、私たちはどう捉え、どう対策し、いかに乗り越えるか?
出来事という事実は1つであっても、それをどう理解するかは千差万別。先を見据えた前向きな対策を打てるかどうかで、私たちの将来は大きく変わる。
今回はこの困難な大転換の時を、敢えて前向きに捉え、将来を切り開くためのヒントを探し、変化を進化と理解し、前向きに発信してみたい。
閉塞感も、ワクワク感も、全ては自分が作り出すものであるのだから。
地域住民は、
私たちを見ている!
私たちが行う医療・福祉事業は、コロナ禍で存在価値が再評価され、社会資源としての重要性が増し、注目される存在になった。
一般の職場や知人との会話の中で、医療機関のコロナ対策の様子が登場することが多い。また家族を介護する人は、介護施設のコロナ対応について、身近な人と世間話や情報交換をしている。
私たちが事業所の中で日々意思決定し実行しているコロナ対策は、いま地域住民から注目されている。そしてその対策が適切か?さらには顧客思考で努力しているか?を敏感に感じ取り、その噂話が広がっている。
いま私たちのコロナ対策は、そのまま事業所の評価となり、今後も長期間にわたって、自社の業績を大きく左右するであろうことは、想像に難くない。この困難な状況の中でこそ、私たちの真意が透けて見えるのである。地域に必要とされる社会資源として、顧客視点での意思決定と運営努力、そして説明責任が必要だ。
管理会計の成功の条件
ウェルフェアー・J・ユナイテッド株式会社
福祉・介護・医療IT統制コンサルタント
木村 元洋
管理会計は通常の財務会計とは異なり、収益を出すために画策する会計の管理手段となります。
法人や企業には当然のことですが経営方針があるかと思います。経営方針を戦略とするならば管理会計は目標を達成するための戦術となります。自法人、自社の実力を知り、状態を知り、可能性を知ることで戦術は大きく変化していきます。
2000年に日本の社会保障給付費は78・4兆円、高齢化率は6.9%、2020年は126兆円、高齢化率は28・7%となっており、社会保障給付費は約1.6倍、高齢化率は約4倍となっています。国は1990年以降から「給付と負担のバランス」から大きく外れているとして、このままでは社会保障制度は持続可能ではなく改革を実施するとしております。
例としまして介護保険給付の報酬のお話です。2000年に介護保険制度が開始されて民間企業の参入などにより顧客と人材確保の競争が激しくなりました。しかしその頃は報酬単価が高かったため顧客と職員さえしっかりと押さえておけば利益を出すことができていました。特別養護老人ホーム(以下、特養)は入所待ちであふれ、なかなか入所することができないために利用者も必死に特養を探す状況が続いていました。特養があれば利益を享受でき、内部留保でお金を残すことができていたのです。2001年には平均8%前後の利益率を出していましたが報酬改定による報酬単価の引き下げ、加算の細分化、人件費及び事業費事務の高騰などにより利益率は1.6%まで下がってしまいました。令和3年度介護報酬改定は+0.7%(実質0・65%)のプラス改定でしたが中をよく見ていくとプラスではありませんでした。そのような状況下で利益を出すという事は大変難しくなっております。
今回ご紹介する管理会計は利益を出すためのプロセスを可視化するものになります。導入し根付かせるには少なくとも2年間本気で取り組む必要があります。さらに管理会計は人事考課制度を組み合わせることによりさらに効果的な結果を生み出すことができるツールとなります。2年間、管理会計と人事考課制度に取り組むことにより非常に効果の高い利益の確保を行うことができるのです。
『ずっと診つづける』を実現していくために
医療法人社団 清心会
春日クリニック 経営管理部長
清田 恵子
■地域に根ざした
診療所を核として
医療法人社団清心会は、無床の診療所である春日クリニックを核として、訪問看護・居宅介護支援事業・訪問介護・通所リハビリ・訪問リハビリ・通所介護・看護小規模多機能型居宅介護・サービス付き高齢者向け住宅を運営しています。クリニック本体は熊本駅に隣接し、その他全ての事業所も駅から5分圏内に位置しています。熊本県・市が長年取り組んできた駅周辺開発がひと段落し、周辺にはマンションやオフィスビルが急増しています。2021年4月に駅ビルがオープンしたばかりで、熊本では一番ホットな場所と言えるかもしれません。
クリニック開業時は、職員7名からのスタートでしたが、現在は100名近くに増え、生まれてから最期まで、「ずっと診つづける」ためには何が必要かを常に追求しながら、チャレンジを続けています。