日医会長選、中川氏が制す
「晩節を汚したな」。5月31日に、日本医師会会長選挙に横倉義武会長(当時)が出馬を宣言した際、ある医療関係者はつぶやいた。一時は勇退を表明しながら、その数日後には撤回して5期目の出馬を表明した横倉氏に迷走ぶりを感じたからだ。果たして6月27日の日本医師会定例代議員会での役員選挙では中川俊男副会長(同)が接戦を制した。これまでも中川氏は政府に対し是々非々で臨み、会長就任後もその姿勢を貫くと述べているが、必ずしも中央とのパイプが強いとは言えない。新型コロナウイルス感染症の感染拡大や年末の全世代型社会保障検討会議の最終報告、さらには2022年度診療報酬改定など懸案が並ぶ中で、どこまでそれを貫き通すことができるか。
どさくさ紛れにオンライン診療突破
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を「デジタル化が遅れているこの国が生まれ変わるチャンス」。驚くような発言が3月の厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で飛び出した。この言葉に象徴されるように、国家の緊急時である同感染症の拡大に乗じて、経済界はかねて求めていた受診履歴なしの人に対する初診からのオンライン診療をもぎ取った。
言うまでもなく、日本では一部を除き対面診療が原則とされているが、経済界ではこの規制を撤廃してオンライン診療の導入を繰り返し訴えてきた。規制は少しずつ緩和されており、2018年度診療報酬改定ではオンライン診療料が設けられた。20年度改定では、実施要件で事前の対面診療の期間を6カ月から3カ月に見直すほか、医療資源の少ない地域では医師の判断で初診からオンライン診療を行うことを可能とするなどした。
〜病床再編で支援続々〜
予想通り、というべきか。公立病院・公的医療機関等の再検証要請期限が事実上、延期されることが2019年末に明らかになった。総務省と厚生労働省、地方三団体(全国知事会、全国市長会、全国町村会)が12月24日に開いた「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」で、厚労省が方針を明らかにした。19年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太の方針2019)で19年度中に対応方針見直しを求めると記載されているため延期と明記していないが、骨太方針2020に向けて工程表を具体化する方針。20年度予算案では、病床再編に向けた各種支援メニューを続々と打ち出しており、診療報酬を含めて経済誘導による再編を強化する。
厚生労働省が9月26日に公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証対象として424病院を公表して1カ月。各地の報道はこの話題で持ちきりとなった。厚労省の幹部は全国行脚して陳謝を繰り返し、地域の医療関係者は地方軽視と糾弾する姿が各地で展開されてきた。公表手法については問題があるのは否めないが、ただ厚労省を批判するだけでよいのだろうか。
「田舎に人は暮らすなと言うのに等しい」「地元住民に不安を与え、現場スタッフに動揺が広がっている」―。10月29日に都内で開かれた「地域医療構想に関する自治体等との意見交換会」(関東信越会場)では、厚労省の手法への批判や現場で動揺が広がる様子を訴える意見が相次ぎ、当初予定時間よりも30分オーバーして終えた。
厚労省が具体的対応方針を再検証し、ダウンサイジングなどの再編統合を検討するよう求める公立病院・公的医療機関等を公表して以来、医政局は対応に追われる日々が続いた。10月4日に地方三団体との協議の場を設けたほか、10月17日から30日まで全国7ブロックで自治体などとの意見交換会を開いた。