通常国会が閉じ、7月の人事異動を前に、にわかに厚生労働省内が慌ただしくなってきた。なかでも動きが目立つのは医政局だ。医療法等改正法の施行に向け、社会保障審議会医療部会が6月3日の会合で詳細な制度設計を開始した。改正医療法の外来機能報告制度が来年4月1日に施行することから、検討の場を設けて議論を急ぐ。保険制度上の仕組みは社保審医療保険部会、診療報酬での取り扱いは中央社会保険医療協議会で議論することになっており、もはや「どこかがこけたら大変なことになる」(厚労省幹部)状況にある。
医療法等改正法は5月21日に成立、28日に公布された。予算関連法案だったため、ゴールデンウィーク前にも成立するとみられていたが、厚労省職員の会食問題や副大臣の委員会離席を含め様々な事案が重なり大幅にずれ込んだ。その分、施行に向けた検討時期がタイトになっている。
法律の内容は医師の働き方改革と医療関係職種の専門性の活用、地域の実情に応じた医療提供体制の確保など。このうち、本年度予算に盛り込まれた病床機能再編支援事業は公布と同時に施行された。持ち分の定めのない医療法人への移行計画認定制度の期限の延長措置も施行し、2023年9月末まで延長されている。
医師の働き方改革に関する内容と、医療計画の見直しは24年4月1日に施行する。医師から医療関係職種のタスク・シフト関連の施行時期は今年10月1日、外来機能報告制度の創設は22年4月1日、医師養成課程などの見直しは23年4月1日となる。
社会福祉連携法人の業務
改正社会福祉法で創設される「社会福祉連携推進法人」の業務内容の検討が進んでいる。制度設計を担う厚生労働省の社会福祉連携推進法人の運営の在り方等に関する検討会ではこれまでに、社員である社会福祉施設や企業などの給食の供給など、比較的柔軟な業務が行える方向で議論されている。今後の社会福祉法人の運営のあり方を考える上で注目される。
社会福祉法人の法人数は2万件を超え、毎年170件程度が増加しているが、小規模な法人が半数を占める。日本の人口動態をみると、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年以降は高齢者人口の増加幅が緩やかになるが、生産年齢人口の減少は加速していき、将来の医療・介護ニーズに対応する人材を確保できるかが課題となる。ただ、社会福祉法人同士の連携方法では、法人間の緩やかな連携か、合併・事業譲渡しかなかったため、設備の共同購入や人材不足への対応といった業務が実施しづらい状況にあった。
そこで、厚労省は社会福祉法を改正し、社会福祉法人を中核とする非営利連携法人の「社会福祉連携推進法人」を創設する。同法人は法律で公布日から2年を超えない範囲の政令で定める日に施行すると規定されており、22年6月までに創設される。
診療報酬改定にも影響か
本誌がお手元に届く頃は、政府の2021年度予算案が公表され、介護報酬改定の改定率も決まっていることだろう。本稿を書いている12月上旬の段階では詳細が明らかになっていないが、これまでの議論を振り返ると、財務省が当初目指していた社会保障関係費の抑制策が、新型コロナウイルス感染症の影響でことごとく小粒に終わった。22年度診療報酬改定で手痛いしっぺ返しが起こる可能性がある。
新型コロナは医療・介護施設事業所の経営に大きな影響をもたらした。医療では、コロナ患者を受け入れた医療機関だけでなく受診抑制などで3月以降入院・外来ともに患者数が急減し、経営に打撃を与えた。日本病院会などが1455病院に実施した調査では、緊急事態宣言下の5月で入院患者延べ件数が5799人(前年同月6761人)で病床利用率は70・2%(同79・3%)、手術件数は124件(同177件)、救急患者受入件数は362件(同541件)と大きく減少している。その後多少持ち直したとはいえ、流行の第3波にある中、厳しい経営状況に変わりはない。
急増の波に乗り遅れるな
2018年度に創設された介護医療院。厚生労働省が3カ月ごとにまとめている開設状況調査によると、これまで緩やかな伸びだったのが、今年4〜6月に施設数は172件、療養床数で1万床も増加した。厚労省の社会保障審議会介護保険部会や介護給付費分科会などでも、介護医療院への移行促進策を設ける方向性が示されており、21年度の介護報酬改定では、引き続き高い評価が望めそうだ。
06年に介護療養型医療施設の廃止を打ち出してから14年の月日が流れた。各種の移行支援策や介護療養型老人保健施設の創設などが行われたが、一向に病床は減らなかった。そこで数年の検討を経て、医療の必要な要介護高齢者の長期療養・生活施設として介護医療院が18年度に創設された。介護療養型医療施設の廃止期限は23年度末だが、厚労省幹部も今回ばかりは「経過措置を終了する」と断言しており、残り3年5カ月の間に転換しなければならない。
そうした中で、先頃発表された6月末時点の介護医療院の開設状況調査では、大きく施設数・療養床数が増加していた。制度創設直後の18年4月末時点では5件・383床で、このところは50件程度の増加だった。それが直近の6月末の数字では、施設数で172件、療養床数は1万896床と一気に増加し、全体で515件、3万2634床になった。